急性毒性
経口
ラットのLD50値として、4,000-13,400 mg/kg の範囲內で10件の報告がある。ガイダンスの改訂により、最も多くのデータ (6件) (6,140 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、8,540 mg/kg (DFGOT vol. 4 (1992)、PATTY (6h, 2012))、10,800 mg/kg (DFGOT vol. 4 (1992)、PATTY (6th, 2012))、11,300 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、13,000 mg/kg、5,890-13,400 mg/kg (SIDS (2009)) が該當する?yún)^(qū)分外とした。なお、3件が國連分類基準の區(qū)分5、1件が國連分類基準の區(qū)分5又は區(qū)分外に該當する。新たな情報源 (ACGIH (7th, 2001)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、ATSDR (2010)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 4 (1992)、CEPA (2000)、NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2009)) を追加し、分類を見直した。
経皮
ラットのLD50値として、2,800 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、ウサギのLD50値として、9,530 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6h, 2012))、10,600 mg/kg (CICAD 45 (2002)、CEPA (2000)、NITE初期リスク評価書 (2007))、10,612 mg/kg (環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)) の4件の報告がある。1件が國連分類基準の區(qū)分5に、3件が區(qū)分外に該當する。ガイダンスの改訂により最も多くのデータ (3件) が該當する?yún)^(qū)分外とした。
吸入:ガス
GHSの定義における液體である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
ラットのLC50値 (1時間) として、10.9 mg/L (4時間換算値:2.7 mg/L) (PATTY (6th, 2012)) に基づき、區(qū)分4 とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(0.2 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。新たな情報源 (PATTY (6th, 2012)) を追加し、區(qū)分を見直した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ヒト103人に対するパッチテストにおいて、本物質の原液0.2 mLの適用により刺激性がみられた (SIDS (2009)) ことから、區(qū)分2とした。またウサギ、モルモットを用いた皮膚刺激性試験で軽度の皮膚刺激性がみられた (CICAD 45 (2002)、初期リスク評価書 (2007)、CEPA (2000)) との報告がある。ヒトの所見を追加し區(qū)分を変更した。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギに原液を適用した眼刺激性試験において、刺激性なしとの報告がある (SIDS (2009))。また、液體や蒸気への1回あるいは短時間の眼へのばく露は、恒久的な角膜損傷を伴わない軽微な結膜刺激をウサギに引き起こす (CICAD 45 (2002)、初期リスク評価書 (2007)、CEPA (2000)) との報告がある。ヒトの事故例として本物質 (濃度不明) に眼にばく露された結果、結膜炎、浮腫、光反射の遅延、重度の角膜炎がみられたが4週間後には回復したとの報告がある (DFGOT vol. 4 (1992)) が濃度等については詳細不明である。以上の結果から區(qū)分2Bとした。
呼吸器感作性
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
ヒトに対する報告が2件あり、本物質5%又は25%水溶液を11人に適用したところ、1人 (レンズの切斷作業(yè)で25%水溶液を扱い腕、胸、腹部に皮膚炎を発癥した31歳女性、ニッケルアレルギーあり) に激しいアレルギー反応を示したが、他の10名にアレルギー反応はみられなかった (DFGOT vol. 4 (1992))。また、本物質の1%及び5%水溶液を10人に適用したところ1人 (4ヶ月間光學レンズの洗浄作業(yè)で25%水溶液を扱い、発疹がみられた17歳男性) にアレルギー反応はみられなかったが、本物質3%を含むエタノール溶液に対して軽度の刺激、紅斑、腫れがみられた。他の9人についてはアルコールに対する軽度の刺激以外の反応はみられなかった (DFGOT vol. 4 (1992))。なお、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、感作性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2009))。動物試験では陰性の結果があるものの、ヒトの事例でアレルギー反応の事例があることから、分類できないとした。
生殖細胞変異原性
ガイダンスの改訂により「區(qū)分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、ラットの優(yōu)性致死試験、マウスの小核試験及び染色體異常試験でいずれも陰性 (NITE初期リスク評価書 (2007)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、SIDS (2009)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、CEPA (2000)) である。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養(yǎng)細胞のマウスリンフォーマ試験、染色體異常試験、姉妹染色分體交換試験でいずれも陰性 (NITE初期リスク評価書 (2007)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、SIDS (2009)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、CEPA (2000)) である。
発がん性
ACGHIでA4 (ACGIH (7th, 2001)) に分類されているため、「分類できない」とした。
生殖毒性
ラットを用いた経口経路 (混餌) での三世代生殖毒性試験においては生殖発生毒性に対する影響は認められなかったとの報告 (ATSDR (2010)、(NITE初期リスク評価書 (2007)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 45 (2002))、マウスを用いた経口経路 (飲水) での連続交配試験では、母動物毒性はないが極めて高用量 (1,640 mg/kg bw/day) で、胎児への影響 (出生児體重の減少、同腹児數(shù)及び生存児數(shù)のわずかな減少、発生數(shù)は不明であるが顔貌異常と、頭蓋骨、胸骨分節(jié)、肋骨、椎骨で骨格変化) がみられたとの報告がある (ATSDR (2010)、CICAD 45 (2002))。 ラットあるいはマウスを用いた経口経路 (強制) での催奇形性試験において、母動物毒性のみられない高用量 (1,000 mg/kg bw/day以上) において児動物への影響 (胎児體重の減少、骨化遅延、骨格奇形) がみられている (ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、CICAD 45 (2002))。 以上のように、母動物毒性のみられない用量において主に骨格奇形を含む児動物への影響がみられたが極めて高用量であること、舊分類の根拠である作用機序がヒトに該當しないとの明確な証拠が得られなかったことから、分類できないとした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ラット、マウスでは、投與量に相関した中樞神経抑制作用があり?多量の経口投與では、昏睡、麻痺、運動失調を示し死に至る。また、頻脈、頻呼吸、気管支肺炎、肺浮腫、うっ血性心不全、代謝性アシドーシス、腎臓障害を伴う多渇癥、多尿癥、尿中シュウ酸カルシウム結晶析出が報告されている。病理組織學的にはシュウ酸カルシウム結晶沈著による腎尿細管上皮の変性、間質性水腫、腎皮質の出血性壊死が認められている (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2009)、CEPA (2000)、ACGIH (7th, 2001))。なお、これらの影響はガイダンス値の區(qū)分の範囲では認められていない。 以上より、區(qū)分1 (中樞神経系、血液系、腎臓)、區(qū)分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
ヒトにおいては、経口摂取後の毒性影響は主として以下の3段階に分けられる。すなわち、第一段階 (摂取から0.5-12時間) :中樞神経系への影響 (中毒、嗜眠、痙攣、昏睡) 及び代謝障害 (アシドーシス、高カリウム血癥、低カルシウム血癥)、第二段階 ((摂取から12-24時間) :心臓及び肺への影響 (頻脈、高血圧、代償性過呼吸を伴う重度の代謝性アシドーシス、低酸素癥鬱血性心不全、成人呼吸窮迫癥候群)、第三段階 (摂取から24-72時間) :腎毒性 (シュウ酸カルシウム沈著、血尿、急性尿細管壊死、腎不全) である (SIDS (2009)、CEPA (2000)、環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004))。さらに、摂取から6-14日、あるいはそれ以降において見られる影響として第四段階を置き、中樞神経系影響に加え、神経學的影響(顔面神経麻痺、不明瞭な発語、運動能力の喪失、視力障害を含む) が観察され、脳神経の損傷を示唆するとの報告もある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 4 (1992))。 なお、ヒトにおける経口摂取による致死量は、約0.4-1.3 g/kg bw (CEPA (2000)) や1.6 g/kg bw (SIDS (2009)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)) の報告がある。ヒトの吸入経路では、情報が少ないが、55 ppmのばく露で、1.5 分後から喉及び上気道の痛みがあり、79 ppm 以上では、激しい痛みとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001))。吸入経路では、ボランティアによる 55 ppm の吸入ばく露試験で吸入開始 1.5 分後から喉及び上気道の痛みがあり、79 ppm 以上では、痛みが非常に激しく 1 分以上耐えられなかった (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001))。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
ヒトでは、男性ボランティアに69 mg/m3までの濃度を毎日20-22時間、1ヶ月間吸入ばく露したが、全身影響はみられなかった (環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004)、SIDS (2009)、ATSDR (2010))。また、カナダ及びフィンランドにおける職業(yè)ばく露による報告では、本物質ばく露により懸念された腎臓への影響はみられなかった (SIDS (2009))。この他、反復ばく露であることが明らかなヒトでの本物質への高濃度反復ばく露による知見はない。 実験動物では、SIDS (2009) 及びATSDR (2010) の記述より、腎臓が最も感受性の高い標的臓器であるとされており、SIDS (2009) で信頼性が最も高いと判斷されたラットを用いた16週間、1年間又は2年間混餌投與試験において、いずれも腎臓に毒性病変(腎癥、腎結石、尿結晶など) が雄に強く生じたが、その発現(xiàn)用量は區(qū)分2を遙かに超える用量 (腎毒性を指標としたLOAELの最小値: 300 mg/kg/day (雄ラット1年間混餌投與試験)) であった (SIDS (2009))。 一方、吸入経路では本物質の反復吸入ばく露試験自體は実施されていないが、SIDS (2009) による記述では、エチレングリコール類の毒性はSIDSがカテゴリー評価対象物質としたジエチレングリコール (DEG)、トリエチレングリコール (TEG)、PEG 200のラット吸入ばく露における影響濃度が1,000 mg/m3超であることから、概して低いと考えられると推定されている。 以上より、カテゴリー物質の知見も含めて、本物質は実験動物では経口、吸入のいずれの経路でも反復ばく露による毒性は低いと考えられるが、ヒトにおける高濃度反復ばく露による影響の有無に関して十分な知見がなく、データ不足のため分類できないとした。 なお、舊分類では環(huán)境省リスク評価第3巻 (2004) にあるヒトでのばく露による癥狀を基に分類されたが、いずれの所見も被験者のごく一部にみられた所見で、本物質ばく露に関連した特異的な有害性を示す所見ではないと判斷されたため、これらの知見は採用しなかった。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため、分類できない。